スピッツのアルバムの中でもこのアルバム「ハチミツ」には
いろいろな思い出が詰まってます。
今聞くとこの手の曲ってだいぶ減りましたね
こう何ていうか安心して聴ける曲って言うんでしょうか?
極端な激しさやインパクトはないけれど知らないうちに口ずさんでいたり
後からフレーズが耳に残ってたりしてました。当時のスピッツといえば
「ロビンソン」とかの有名曲もいいんですが、ひそかにマイブームだったのが
アルバムに収録されていた
「愛のことば」
という曲です。
その曲には私にとってこんな恋のエピソードが含まれておりました。
同じ職場に入社当時からずっと好きだった子がいて、
いろいろ告白の言葉を考えてました。
普段はボケと突っ込みの仲の良い友達だけど、
ふと目が合うと じっと見つめてしまう。
きっとこんな時って恋している顔してるんだろうな。
自分の気持ちを彼女に悟られてしまうと思い、
つい照れ隠しで目線をそらせてしまう。
そんな不器用な自分が告白する決心をしたのは
何の前ぶれもなく もらった誕生日プレゼントがきっかけだったのだろう。
言葉できっちりと自分の気持ちを伝えたい・・・・
想いが強くなるにつれドキドキと心臓の鼓動が早くなる。
それはたとえ夜勤の仕事の最中でも治まることはない・・・
告白する!と、一大決心をした自分は、
仕事をサボりながらも 彼女を呼び出すためのメッセージ を書く。
「朝礼終わったら話したいことがあるので屋上来てね」
たったそれだけの一行を書くだけでも想いが込み上げ、
手が振るえて何度も文章を書き直す自分。
心臓がバクバクで仕事どころではない状況だった。
夜勤の朝方、5時の定時間後の休憩時間にそのメッセージを書いたメモを
彼女の下駄箱に入れた。
残業時間、時計の針が6時、7時と経つにつれ
心臓の鼓動が時間がごとに早くなるのが自分でもわかる感覚。
それは自分の心の中で葛藤する時間でもあった。
なぜなら、その彼女には彼氏がいることを知っていたのだ。
うまくいってる うまくいってない そんな噂はどうでもよかった
だが、自分の気持ちを彼女に対して自分の言葉で伝えなければ
おさまらない瞬間が継続的におとずれる。
1%の可能性がある限り自分を信じてみる
そんなことが頭をよぎりつつも葛藤はさらに続く
「だめだ、やっぱり俺には勇気がない次回にしよう」
「なかったことにしよう」
「だいいち彼氏がいるじゃないか」
「いや 告白するには今日しかない」
「今日はだめだ 次回にしよう・・・・」
頭の中で繰り返される不安な時間だけが無常にも過ぎてゆく・・・・
残業時間が終わり、始業のチャイムが鳴り響き、覚悟を決めて 屋上に向かう。
誰もいない静かな屋上。
遠くにみえる煙突の煙。
包み込むようなやさしい風だけがほほを通り過ぎていったのを覚えている。
時間が刻々と過ぎてゆき、あきらめかけていた瞬間 その彼女は屋上に来てくれた。
「どうしたの?」
そうやさしく微笑む彼女。
普段はボケと突っ込みの仲のいい友達だったけど今回ばかりは真剣だ。
しかし、考えていた自分なりの 愛の言葉 の破片すら思い浮かばない。
頭の中は真っ白だった。
「あの・・・・」
彼女を見つめる自分 心臓鼓動が最高潮に達する。
「笑わずに聞いてね・・・・」
軽く深呼吸し、照れ笑いを必死でこらえて
勇気を振り絞り 心の奥底から叫ぶ
「ずっと前から・・・・君のことが好きでした!
俺と付き合って下さい!」
「・・・・・・・」
その後の沈黙は、ほんの数秒だったかも知れないけれど数時間に感じた。
「・・・・・・・」
「私・・・・・・・・まだ彼と付き合っているんだ・・・・・・・・・ごめんね」
「・・・俺今日どうかしてるね 朝忙しいのに屋上なんかに呼び出しちゃってごめんね」
「自分の気持ちを伝えられただけでもうれしいから、気にしないで仕事がんばってね」
感情をおさえながらも一緒に階段を降り、いつものくだらない冗談を飛ばしながら
職場の入り口まで送り届けてあげた。
帰り道
答えは自分でも分かっていた・・・。
告白する前からじゅうぶん・・・・分かっていたんだ・・・。
でも自然と 涙があふれでてくるのはなぜだ?・・・・・。
自分の気持ちを伝えられた うれしなみだ だよな・・・・・。
そんな甘酸っぱい思い出の詰まった曲がこの 愛のことば という曲です。
口下手で話すことが不器用だった自分。
結局 実らなかった恋話。
以後 さまざまな恋愛、失恋を繰り返すわけだが
この時の勇気と涙がなかったら今の俺は存在しないな。
ありがとう。
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