第二傷


作品タイトル

チューブ にまつわる失恋エピソード

ブログ(プチマッスルのアジト)より転載


















夏が来たと実感する曲はやっぱりチューブの新曲を聴いた時ですね

夏が近づいているときに聴くと とても わくわく胸が躍るのだけど

夏の終わりに聴くと なんてせつないんだろう?不思議です。

96年のこのアルバム「ONLY good summer」に含まれている曲

「ONLY good time」

には

こんな思い出が詰まっています・・・。








出会いはスポーツクラブに通い始めたころでした・・・・

スイミングの中級クラスで バタフライ を習得しようと必死に励んでいました。

クロールはめちゃくちゃ得意なのに バタフライはどう見ても

セミが溺れている光景にしか見えない。



なんとか25mは泳げるぐらいまでは上達していた時期です。

新顔の女の子(ひまわりさん)がクラスに遅れて登場です。



とにかく明るく、かわいらしい笑顔、美しいバタフライの泳ぎ・・・・・

次の日から毎日、その子に負けまいとライバル心 旺盛で、

ひとりバタフライの猛特訓の開始です。

今から考えると それが 一目惚れ の始まりだったのかもしれません。



しばらく見かけなかったのですが 数日後トレーニングジムを終えプールに向かう途中

ばったりと ひまわりさんと 出会ったのです。




「この前スイミングの同じクラスでしたね」



「あ そうですね!お名前何ていうんでしたっけ?」




そんな会話が最初に話した言葉だった。



「プチさん毎日トレーニングがんばってますね?」

「バタフライうまくなりましたか?」



痛いところをついてくる・・・



「もちろんさぁ〜!!ひまわりさんには負けないよ〜」



「そうかしら〜勝負してみる?( ´艸`)ムププ」



くやしいけど元スイミングのインストラクターだということを聞いていたので


「気が向いたら勝負してやるよ〜」


と思いっきり強がってその場をあとにした。








しだいに ひまわりさん に惹かれていく・・・・








そんなことに気が付き始めたある日、会社の先輩とボディーボードをしに

海に行った時のこと、偶然その海でひまわりさんと鉢合わせ、

ひまわりさんもボディーボードをやっていたのです。



「あ!プチさん!」

「プチさんもボディーボードやるんですか?」


「げ!ひまわりさん!」

「ま まぁ〜ね」


「スピンとかぐるぐる出来ちゃうんだ?すごいなぁ〜」


「いえいえまだ始めたばかりなんす。スピンなんてぜ〜んぜん」


「私と同じだね どっちが早くスピン出来るか競争しない?」





その純粋な子供みたいな無邪気さと、こぼれんばかりのひまわりさんの笑顔に

ますます惹かれていく自分に気が付き ポっと 赤くなる私。



「の のぞむところだ〜負けないよ〜」





なんだかんだ、話す機会が多くなり、いつしか毎日メールのやりとりをするような

仲の良い友達となっていた。

時には ボディーボードに2人で行ったり 食事に行ったり カラオケ行ったり・・・・




でも 私は、しだいに気が付きはじめていた。



 彼女の心に大きな 傷 があることを・・・



スポーツクラブが終わり家路に着くと彼女にメールをした。





「ひまわりさん さみしくない?」      



                    「ちょっとさみしいかも・・・」



「今から近くの夜景でも見にいこうか?」            


                     「うん」




彼女の家まで車で約20分 免許も持たず かっ飛ばして行った。

とりとめのない笑い話やら 仕事の話 日常の話 おいしいお店の話 

いろいろ話している間に

目的地のきれいな夜景の見える峠に到着。




わぁ〜きれいだねー プチさんありがとう!




しばらく きれいな夜景を眺め どうしても聞きたかった話をきりだした。















「ひまわりさんて時々悲しい顔するよね?つらいことでもあったの?話してごらんよ」













「・・・・・」















「私ねチューブの曲大好き!!プチさんは好き?」





(まんまと話をすりかえられたか・・・まぁ 踏み入ってはいけない領域かな

誰にでも話したくないことだってあるだろうし・・・。)





「そうだね!チューブの曲、俺も好きだよ〜」




「だよね〜車で良く聴いてるもんね〜この前出たばかりのTUBEのアルバム」




「へへ〜ばれてたか」











「・・・・・」





















「プチさんびっくりしないでね・・・・・」





「うん・・・・・」




















「私ね・・実は バツイチ なんだ・・・・



 6年間連れ添っていたけど先月別れちゃったんだ・・・・



 夫婦仲がギクシャクしていたのが大きな原因だけど



 もっと他にも原因があったの



 2人の間に子供が出来なかったんだ・・・



 つらい検査も受けたし、何度も何度も病院に通ったよ



 2人とも異常がないんだけど子供が授からなかったんだ・・・



 私、一生 子供産めないのかも・・・」









彼女は今にもこぼれそうな涙をこらえていた。



恋愛経験の浅かった私には想像以上な発言にどんな言葉を

かけてあげたらいいか分からず黙り込んでしまい

そっと彼女を抱き寄せてあげた。

誰にも話すことも出来ず ずっと一人で抱え込んでいたつらさが

小刻みな震えと共に鼓動が伝わってくる・・・・。

言葉は無くとも涙が流れ出してくる自分に気付く・・・。

そして軽く肩をたたき 言葉をかけてあげました。





我慢することなんてないよ




 泣きたいときは思いっきり泣けばいい・・・




 いつでも胸をかしてあげるよ




 6年間のつらい思い出、楽しい思い出、すぐに消すには時間がかかると思うから




 今すぐには無理かもしれないけど・・・




 いつかきっと君を幸せに出来る自分になってみせる










せいいっぱいの告白だった。




正直、若かった私は バツイチ という言葉に 

悪いイメージ という固定概念があったのだと思う。

その言葉がひっかかって素直に 付き合ってくれ 好きだ と

言う勇気と自信がなかったのだ。

ひまわりさんを家まで送り ひとり帰りの車の中、

自分の うつわ の小ささに涙があふれ出ていた。







次の朝・・・  メール をくれた。


「プチさん昨日はありがとう!プチさんがつらいときは

私の胸かしてあげるからね

 洗濯板だけどね ゞ( ̄∇ ̄)ぷっ!」


「まぁ〜た ひまわりさん無理しちゃって!悲しくなった時はまた胸かしてあげるよ

 胸毛引っこ抜いて遊ぶなよぉ〜」


こんな感じの

いつもと変わらない 息の合ったメールのやりとりだが・・・。

昨日の小刻みに震えるひまわりさんの鼓動を思い出し

涙がでそうになる・・・。





「プチさんてどんな人と結婚するんだろうね?私も候補に入れといてよ〜」


「ぷぷぷ 忘れなかったらネ」


「あ〜 いじわるなプチマッスルだこと!」





「よーし じゃぁ分かった! 

お互い60歳になったクリスマスにディズニーランドで

 待ち合わせ っていうのはどう?」





「ははは 何それ〜www」



「いい?約束だよ」



「分かったよ〜 ぜ〜〜たい忘れないから!! 

プチさんがボケ老人になってなきゃいいけどね」



「なぬ〜 俺はぜ〜〜たい忘れない自信があるぜ〜〜賭けてもいいよ」



「ははは 負けないわよ〜」









そんな 会話の続く楽しい毎日だったが 

私が会社の都合で別会社に応援に行くことになり

スポーツクラブにも行けなくなり

次第にメールの回数が減ったある日

久しぶりにメールが来た





「私 今、ある人に告白されて付き合うことになりました。

未来への第一歩、先に行かせてもらうね

 本当はね、私プチさんのことがずっと好きだったよ・・・

あの約束忘れんなよ〜」





「チューブの曲聴いたら君の事思い出すよ。いろいろありがとうね・・・・」













さよなら という言葉がどうしても言えなかった秋の夕暮れ

ひとすじの涙がほほをつたう・・・・




季節外れのチューブの曲

「ONLY good time」

がバックに流れていた・・・。











あれから何年経つんだろう 彼女は再婚したらしく

元気な赤ちゃんを連れて歩いているところを街中で見かけました。

旦那さんと3人で、とても幸せそうな

そして

ひまわり のような明るい笑顔をふりまきながら・・・・・・






私も今ある幸せを大切に過ごしていきたいな!







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