第一笑



作品タイトル
 合図(あいず)



友人  の体験談             


これは私の古くからの友人  が車の教習所に通っていたころのお話です。

Mは当時18歳、教習所に通い初めてまだ一週間目!その日はいつ度となく緊張

していました。第一段階のゲームセンターまがいのシュミレート機械から、実際の

自動車に教官と初めて乗る日だったからです。 は朝から気合が違いました!

学校では授業中、教科書に隠した自動車教本が見え隠れしていて

彼の免許取得に関する意気込みがうかがえます。

いよいよ教官がやってきました。よりによってちまたでうわさの鬼教官です!

Mは教本に書いてあったマニュアル通り後方確認をして車に乗り込みます。そこで教官の一言

「おまえは助手席だろ」

そのドスのきいた声にはいっぺんにビビりました。

「は・はい・・・!」

気を取り直して助手席に座る

しばし冷汗を掻きながら教官の運転指導に集中しカーブに差し掛かった時

「いいか?カーブの手前でスピードを落とす時はポンピングブレーキだぞ!
いいな?分かったか?分かったのか?」

その言葉に即座に反応を示す「はい!分かりました!」と言った瞬間車は前後に

カクン!カクン!と激しい揺れ!教官は即座に急ブレーキ!

・・・・・一瞬の沈黙・・・・・

そこで教官の一言

「おまえは踏まなくていいんだよ!」

は教習車の助手席についている

教官用の補助ブレーキをポンピングブレーキしていました。

「す・すいません!!」

教官はあきれた表情で 「まあいい!じゃあ次はお前が運転してみろ」と席を立ち

外に出て助手席側へと向かいも運転手側に回り込みマニュアル通り後方確認

をしてドアを開け運転席に座ってます。しばしの沈黙の後、教官は言った。

「何やってる早く合図出して発進しろ!」

「はい!」。急発進しようとして、またまた教官の急ブレーキ!

「おい合図はどうした?」

 は不思議そうな顔をして考える・・・

(合図ってなんだっけ? そ・そうか!)

 は思い出したようにサイドミラーとバックミラーを指差し確認しだした

「よし!よし!よし!」っと歯切れ良い声を出して指差し確認をしたのち、ゆっくりと発進!

即座にまた教官の急ブレーキ。

「違うだろう!左に曲がる合図だよ!」

とドスのきいた低い声で一言。

は汗だくになって頭の中が真っ白になっていた。

( 指差し確認が違うとしたら何?何なんだ?誰か教えてくれ〜 )

ない頭をフルに使って自問自答を繰り返す!

・・・発進前にやる事ってなんだ?・・・一体なんなんだ〜〜〜〜!!!

彼の頭の中には教本に書いてあった アレ しか思いつかずそれを実行した!

「教官!これでいいですか?!!」

Mは運転席側の窓を全開に開け、右腕を窓の外へ水平に出し青空方向に直角に

突き上げた!!

「ばかやろう!ウインカー出せって事だよ!」

と鬼教官は 特大カミナリを落としました!

とっさに出た の行動は自動車運転教本に書いてあった

車の左に曲がる手信号だったとさ。

今では  と飲みに行くたびにこの話題で盛り上がります。あのときハンコウは

押してもらえたのか未だ謎である。



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