第八笑



作品タイトル
独り言 (ひとりごと)



プチマッスル 体験談      


実は、私も腐れ縁仲間の友達M君に負けない車での笑い話がありました。

それは免許をとってしばらくペーパードライバーだった私が初めてマイカーを購入

し、車が届いた日のことです。はじめて一人で乗るのは教習場の無線以来だなぁ

あの時は無線の声に文句つけて

「うるせぇ教官だなぁ!」とか独り言を言っていたら

教官に「全部聞こえてんだぞ!」って怒られたっけ。

そんなことを思い出しながらまずはガソリンスタンドに向かって走り出します。

マニュアル車を運転して初めて一人での信号待ちです。

「よし!まずはギアを落としてポンピングブレーキ」と、

当時の車はABSなど付いていないのでポンピングブレーキが基本でした。

「停止線から1メートル以内に車を停止させてと・・・・」

まさに完璧な停止だと自己満足をしながら

信号を渡る女子高生の太ももに釘付けでした。

「高校生ぐらいの時ってナンパする車がうらやましかったなぁ〜
これからは自慢の車でナンパもし放題だぁ!!」

と出来もしない小心者の私がナンパする想像をしていると

信号はすっかり青に変わっていました。

プップーと後方車にクラクションを鳴らされて、我に返る私。

あわててアクセルを踏もうとするがエンジン音が大きくなるばかりで

一向に前に進みません!あせるな!あせるな!と思いつつも

はじめてのトラブルはあせってしまうものです!

ギアがニュートラルだということが分かっていても次の行動にうつせないのが

初心者の怖いところ。

なんでギアが入らないんだよ〜

と必死にギアノブをカチャカチャやるが入りません!

クラッチが完全に踏み切れてなかったのです!

それに気付きギアをLOWに入れたとたんカクン!カクン!

やってしまいました。エンストです。

プププ〜!!と後の車があおります。穴があったら入りたい心境です。

冷静さを取り戻した私はキーを回します。

あれ〜!おかしいなぁ?

何度も何度も試みるが回しすぎた時の異様な機械音しか鳴らず

一行にエンジンは、かかってくれません!

なんでだよ〜〜〜!

私は汗だくになりながら道路のど真ん中で立ち往生していると

心配になった後方車の人が降りてきて

「どうしました?」と様子を見にきました。

「エンジンがかからないんですよ〜!」

と私は滝のように汗だくになってキーを回していると

「あの〜さっきからエンジンは、かかってるんですけど・・・・」

と冷ややかな声。

「本当だ・・・」

私はエンジンの音が静か過ぎて聞こえてなかったのです。

窓閉めてたから聞こえなかったんだなと思い窓を全開にし

信号を見るとすでに信号は黄色に変わり赤になってしまいました。

後の車は大渋滞。私の顔色もはずかしくて赤色です。

やっぱり油断はするもんじゃないなぁと気を引き締めて

再度、青になりのろのろ運転で順調に走り出します。

ついてない時はとことんついていないもので、

バスの真後ろについてしまいました。

これってバスがバス停に止まったら追い越ししなくちゃ

いけないんだよなぁ〜!と思いながらも

止まるんじゃねぇぞ〜

と、ひとり車の中で叫んでいました。

しかし予想をみごとに裏切りバスはウインカーを出しバス停に止まります。

「なんで止まるんだよ〜〜かんべんしてよ〜」

と独り言はますます大きくなります!

窓を開けていたので通行人には丸聞こえです!

しかしなんとかこの状況を乗り越えなければ!という気持ちが強く

独り言もお構いなしです!

「止まるんじゃねぇ〜って言ってるだろうが〜〜」と、絶叫する私。

でもやるしかありません。早速教本どおり対向車が来ていなかったので

追い越しのウインカーを30メートル手前から出し、ス〜とバスを追い越す

つもりでした・・・が・・・

ギアがなぜか5速に入っていて思うようにスピードが出ません!

「だ〜〜から止まるんじゃねぇ〜って言ったんだよ〜」

と大声で叫んでいました。もちろん車内にいるのは私だけです。

素直にギアを下げればいいものをそのままあせってはいけない!と、

ギアを変えずのんびりなスピードを保ったままバスを追い越していきます。

窓を開けて大声で通っていたこともありバスの乗客がいっせいに

こちらをのぞきます!はずかしさも頂点に達し

流れていた尾崎豊のカーステレオのボリュームを大きくして歌い出す私。

「♪ I LOVE YOU〜〜!!」

心なしか声が裏返っていました。

無事バスを追い越して車線に戻ると目的のガソリンスタンドも追い越してました。

「バスのバカヤロ〜〜が〜!!」

と、しょうがなくもう少し先にある初めてはいるガソリンスタンドに入りました。

給油口の真横に停車します。

「いらっしゃいませ!!」

と元気いっぱいの店員がでてきて私にこう言います

「すいません給油口が逆側なのでこちらに回って下さい」

と私は冷静に冷静に・・・と車を移動させます。

(まぁ今日はついてない日だ。のんびり行こう)と思う反面

(なんで俺ばっかりついてないんだよ〜!)

半分いらだってました。そんなことを考えてぼけっとしていると、店員が

「あの〜給油口あけ・・・・」「あ!はいはいすいません」

私は、あわてて鍵を店員に渡します。

「あ・・シートの横にレバーがあるのですが・・・それで開けないと・・・」

私が以前おやじの古い車で練習していた時は鍵を渡して外から開けるタイプの車

だったのでうっかり間違ってしまいました。

「あ!すみません」と私は鍵を受け取れるとシートの横にあるレバーを引き

「ハイオク満タンで!」と言います。

・・・・一瞬の沈黙・・・・

「すいません!トランク開けちゃったみたいですね」

と店員は、笑いをこらえて私にいいます。

「ごめんなさいもう一度しめてください」と私ははずかしがって言い直します。

(くそ〜みんなあのバスのせいだ!)と自分の失敗は全部あのバスのせいだと

決め付けていると、店員がまた私に近寄ってきます。

「あ・あの〜またトランク開けちゃったみたいですね・・・」

私は顔から火が出る思いでした。

「ごめんなさい・・・」(なんでこうなるんだよ〜)

ようやく給油口が開きガソリンを入れ始めました。

「窓ふきますので窓閉めてください」と店員の言うことにしたがうと、

窓を一斉に手際よくふきはじめました。私はガソリン代を用意して準備万全にして

いると、窓ふきが終わりさらにぴかぴかになった窓を見て

(これで悪い運も吹き飛んでくれればいいのに・・・)

独り言をつぶやいていました。

ガソリンを入れ終わり店員が領収書を持って来ました。

窓を開けて受け取ればいいものをわざわざドアを開けてしまい

店員にコツンとあててしまいました。

店員は苦笑いし、「はい!5000円からお預かりします」

店内におつりを取りに行きました。

私ははずかしい思いでいっぱいになりお釣りをもらわずににげだしたい心境にから

れていました。店員がかけよってきてお釣りを受け取ると開いていたドアをしめ一

目散ににげだそうとしていたが、どうやら切り返しをしないと出れなさそうな場所に

車を止めてしまっていたのでバックして切り返しをこころみました。

一目散ににげだしたい私は急いでバックギアを入れ、勢い良く後を振り向くと

ごつ〜ん★!と大きな音と共に激痛が走りました。

「いて〜な!チクショ〜〜!

窓ふき過ぎなんだよ〜〜〜!」

いままで溜まったうっぷんを閉まったピカピカの窓のせいにして

密閉された車の中で大声で叫んでました!

おでこをぶつけ、特大たんこぶを作った私は

痛いのを店員さんに悟られないように我慢して、

幅の狭いスタンド内で、細かい切り返しを壁にぶつけないように

ちょこちょこ何回も何回も前後に切り返している姿は初心者丸出しでした。

(はずかしい〜〜〜)

その日はそのままに家に帰って「もう車は乗らない!」

やけくそになっていました。

その晩その話をいつもの腐れ縁連中に話すと友人Mが

今日バス乗ってたらさぁ

独り言を言っている変な車が追い越して行ってさぁ!

突然、車の中で大声で歌いながらのろのろと通り過ぎていって

大爆笑しちゃったよ!

バスの中の女子高生が

「ああいう運転する車の人にだけはナンパされたくないわ 最低〜〜!」

と言っていてさらに大爆笑!!

運転していたのおまえじゃないのか?

私はすかさず

「俺じゃないことは確かだな」

と軽く流しましたとさ。

今では、なつかしい苦い思い出です・・・が・・10年以上たった今だに

友人 M は、自分の教習所話(第一笑)を棚に上げ

運転していたのおまえじゃないのか?と聞いてきます

そして

俺じゃないことは確かです!!

と、言い張る私です
 


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