以前、仕事の都合で海外出張の多い派遣会社に出向に行くことになりました。
その日は初めての海外出張!仕事はともかく海外に行かれるというだけで
わくわくドキドキ!海外はもとより飛行機に乗ることすら初めての体験でした。
14日間の日程で韓国に行くことになり成田空港から仁川(インチョン)空港まで
約1時間半。一緒に行った仲間達約10人はここぞとばかりに
窓側をキープして仕事を忘れてすっかり観光気分で
あっというまに仁川空港に到着です。
空港に着くなり
「いやーキムチくせえな〜」
と第一声を発したのは気合入りまくりの岡ちゃん。
岡ちゃんは4つ上の先輩ながらその落ち着きのなさと
挙動不審な行動に、誰もが
「この人は何かやらかすな・・・」
と、言葉が飛び交っていました。その日は何事もなくホテルに到着。
ホテルに着くなり、まとめの人とホテルの管理人が何やらもめています。
「ホテルがいっぱいだから入れない?」
「スミマセン・カワリノホテルヨウイシマシタ」
と、カタコトの日本語が聞こえてきます。
しょうがなく約10人の団体は管理人の運転するマイクロバスに乗せられ
どこへ連れて行かれると思いきや
なんと近くのラブホテルに連れて行かれました!
初めての海外でしかも宿泊施設がラブホテルで14日間?しかも全員男。
当初宿泊するはずのホテルの管理人はマイクロバスを降り
ラブホテルの管理人と、かれこれ10分は交渉しています。
私達もギュウギュウ詰めのマイクロバスに閉じ込められているのが
耐え難くなり座席を倒して外に出ます。
大の男10人がよりによってラブホテルの前をたむろしている
光景は、まさしく亜空間そのもの。通りをすれ違うカップル達は
「この日本人のゲイ団体は何考えてるんだ?」
とでも話していたに違いない。すると街を歩いていた一組のカップルが
つかつかつか・・・とホテルに歩み寄ってきました。
まさか・・・・
と思いつつも10人の団体はサッと二手に別れ道をあけると
管理人から鍵を受け取り、スタスタとエレベーターに
乗り込んでいきました。
「ここって一般のお客さんも入ってくるんじゃ〜ん!」
岡ちゃんは、何を想像していたか、にこにこしています。
ようやくラブホテルの管理人と話がついたらしく
ひとりひとりルームキーが渡されました。さすがに10人いっぺん
にはエレベーターに乗れず。年配の人が長旅でおつかれのようなので
先にエレベーターに乗せ、岡ちゃんを含む若者たちは後発でエレベーターに
乗ることになりました。ふとエレベーターの脇でなにやら
挙動不審な動きをしている岡ちゃん。
「何しているんですか?」
と、私が尋ねる間もなく、左わきにはすでに厳選された5,6本のエロビデオが
抱えられていました。私達は
「海外に来てまでそんなの見てるなよ〜!w」と
大笑いしていると、さすがにラブホテルの管理人は
けげんそうな顔をしてジェスチャーで戻せ戻せ!とやっています。
しぶしぶ棚にビデオを戻す岡ちゃん。ちょうどエレベーターが到着し
みんなが乗り込むが、岡ちゃんはまだ棚に戻しています。
相当なごりおしかったのでしょう。
「先行くよ〜!」という言葉に即座に反応しエレベーターに飛び乗ってきました
エレベーターの扉が閉まると同時に 「バタン!」 とビデオケースを服の
内側から落としたのは言うまでもなく岡ちゃんです。やっぱり隠し持ってました。
「あした6時半にフロント集合ね!おやすみ〜」と言うと各部屋に別れ
荷物を整理し就寝することになりました。
・・・夜中の1時ごろでしょうか?・・・
明日の準備と韓国通貨と日本円の通貨レートの区別に頭を悩ませていると
隣の部屋から何やら韓国語の話し声が聞こえてきます。
日本のラブホテルと違って防音施設など無くつつぬけです。
私は気になりつつも明日の準備と財布の中身の仕分けに急いでいました
「え〜 1000円 が 10000WON でと・・・」
隣の部屋ではカップルが楽しく会話しているようで笑い声が聞こえたかと思うと
しばらくして急に静まりかえりました。
私の耳はダンボ状態です。
それを振り払うかのように銭勘定に集中する私。
「え〜1万円が10万ウォンで・・・ホテル代が・・・・40万円で・・・40万円???」
頭の中では銭勘定どころか隣の部屋の次の行動が気になって気になって
仕方ありませんでした。しばらくすると・・・
案の定、隣の部屋のカップルのあえぎ声がウォ〜ンウォ〜ンと
つつぬけで聞こえてきました。
マジかよ〜と思いつつも
韓国人のあえぎ声はやっぱりWONかぁ!!と妙に納得し
その日は、なかなか寝付けず、ようやく隣の部屋のカップルがシャワーを浴び
寝静まったころに就寝しました。
翌朝・・・眠い目をこすりながらフロントにつくとみんなその話題で持ち切りでした
「昨日の晩は、参ったね〜ぜんぜん寝れなかったよ〜」
「俺の部屋なんて両隣と上の階でハッスルしててサラウンド状態だったよ!」
しばらくして目の下にくまを作ったまとめの人がやって来ました。
「俺なんてさぁ〜朝4時ごろドアを トントン!と叩いたから眠い目を
こすりながらドアを開けてみると、
下着すがたでガウン羽織っている
かわいい女の子が立っててさぁ!
マニー・マニーって言って手を差し出すんだよ!
びっくりしたから NO!NO!って断ってベットに入ると隣の部屋でも
同じようにトントン!って叩いていてさ!3〜4つ隣の部屋でその音が
止まり、その子が部屋に入っていくドアの音が聞こえたんだよ!!」
「まじっすか!!それって売春じゃん!」
ちくしょう〜海外ではそういうのありなのか〜!
と思いつつも仕事に出発しました。
第一日目の仕事は、かなりハードで重労働でした。
明日は間違いなく筋肉痛だなっと悟った私は体のあちらこちらに
シップを貼り、爆睡状態。つかれた〜・・・・・
・・・・夜中の2時ごろでしょうか・・・・
トントントン!と部屋を叩く音が聞こえ、飛び起きました!
私は一瞬にして昨日の朝の売春話を思い出しました。
まさかなぁ〜と思いつつもパンツ一丁で必死にシップをはがしている
獣に変身している自分に気が付きました!
いててて〜!
毛がシップにからみついてなかなかはがれない。
こういうときに限って安物のシップを買って来てしまう運の無さ!
財布は取られないようにここに隠してと・・・
急いでパジャマに着替えると裏返しでした。
「何やっちゃってるんだよ〜」と独り言。
すかさず着替え直し
期待と不安が高まる中、眠そうな演技をしてドアを開けます。
「だれ〜?」
と、そこにいたのは・・・・
パジャマ姿にジャケットを羽織った挙動不審の岡ちゃんでした!
「こんな夜中に何やってるんですか〜?」
と期待をみごとに裏切ってくれた岡ちゃんは
「いや〜ごめんごめん!腰が筋肉痛で痛くて寝れないからさぁ〜
シップ分けてくれないかなぁ〜?」
とあっさり答えました。
(もうねぇよ〜)と言いたいところを抑えて、さっとさと帰って欲しかったので
最後の一袋手渡すと、「もうないですよ!」と言いドアを閉め明日に備えて
床につきました。まったく違った意味で散々な目にあったなぁ〜・・・
・・・次の日・・・
会社まで約1時間近くあるマイクロバスの中で岡ちゃんに一喝を入れました
「夜中に来るのは勘弁してくださいよ〜ぜんぜん寝れなかったじゃないすか〜」
「ごめんごめん」とシップのにおいがプンプンする岡ちゃん。
どうも様子がおかしいです。
「なんか腰冷えちゃってさぁ〜腹が痛いなぁ〜」 と言ったっきり
黙りこくって汗だらだらです。その様子を見ている私もなんだかお腹が痛く
なってきました。「やべぇ〜昨日のキムチが当たったか??」と独り言をつぶやき
車が会社に着くと同時に岡ちゃんと私は一目散にトイレにかけこみます。
一歩リードして私が先にたどり着くと4つある大の便器のうち3つとも
トイレットペーパーが無く、幸い私は残りひとつの紙のある便器を使用する
ことが出来、ホッとしていると後から来た岡ちゃんは紙の有無どころではなく
一番端のトイレに駆け込むと同時に大放出していました。
私の入っている所にトントンと誰かが、せかすのでサッサと用を済ませ
みんなのいるベンダールームに待機していると後から
用を済ませた岡ちゃんがやってきました。
「だいじょうぶでしたか?」
と心配だった 紙 の事を聞くと
「いやぁ〜一時はどうなるかと思ったよ〜紙持ってなくてさぁ〜」
「で、どうしたんですか?」と私。
すると岡ちゃんはこう答えました。
「紙がなくてしょうがないから
腰に貼っていたシップはがしてふいたよ〜」
え〜〜〜!!!
と、気持ちは分かるけど大爆笑!
(あれって昨日あげた最後の一袋じゃん!)
誰かが言った「運が良かったな!」という言葉が
一日中頭をよぎり、その日は岡ちゃんの顔を見るたび
笑いがこみあげてきてしまい全然仕事になりませんでした。
後でトイレに行ってみると予想どおり便器が詰まって
使用禁止になっていたことはいうまでもありません。
その後も岡ちゃんは話題の尽きない要注意人物で伝説を作り続け
初めての海外出張は楽しい思い出となりましたとさ。
今では会社をやめてしまい新たな聖地で伝説を作り続けていることだろう・・・
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